子育てと「発達障害」

発達障害に関する本④ 発達障害の子のためのハローワーク

発達障害の子のためのハローワーク
著・編集 TEENS執筆チーム
監修 鈴木慶太、飯島さなえ

発達障害のある子に向けた、お仕事ガイド
それぞれ違うタイプの発達障害のある5人の子ども達が、様々な職場を見学する中で、160の仕事に出会うストーリーです。

仕事ってこんなにあるよ!
こんなこだわりが活かせる!
こんなスキルを身につけよう!など、子どもの特性に即したアドバイスがあり、発達障害を持つ先輩たちの就労体験談も聞くことができます。
後半では、保護者に向けた情報やQ&Aもあり。

TEENSは、発達障害のある小中高生向け放課後等デイサービスで、そこのスタッフさんが1年をかけて執筆した本です。
TEENSホームページ上でこの本が紹介されており、監修者の飯島さなえさんによる解説が掲載されています。
この、飯島さんによる解説がものすごくわかりやすく、この本に込められた思いがとてもよく伝わってきます。

https://www.teensmoon.com/information/発達障害の子のためのハローワーク/

はじめに、登場する5人の子ども達の紹介(特性や好きなものなど)が載っているのですが、本だと、それぞれが具体的にどのような障害を持ってるというところまでは書いてありません。
しかし、HP上の飯島さんの解説によると

  • 鉄道大好き てつおくん:ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー)代表
  • おっとりしてます こころちゃん:ADD(ADHDの不注意優勢型)代表
  • やんちゃでげんきな ハイパーくん:ADHD(注意欠如多動性障害)代表
  • 静かな常識人 しずかくん:LD(学習障害)代表
  • いつもニコニコ あかりちゃん:軽度知的障害代表

という設定になっています。

第1章は、お仕事ガイド
160種類の仕事が紹介されています。

例えば、最初に紹介されている「鉄道のお仕事」
ぱっと思い浮かぶのは、電車の運転士さんです。
そして、鉄道大好きてつおくんも、もちろん将来は電車の運転士になりたいと思っています。
しかし、運転士の場合、事故があって電車の運行が遅れたり、予想外のこともたくさんおこります。
予定の変更が苦手で頭の中が真っ白になってしまうてつおくんにはむずかしいかもしれない…。
向かない理由をきちんと説明した上で、調べて分析するのが得意なてつおくんには、「システム開発」が向いているかもしれないというアドバイスをします。

運転士以外の鉄道のお仕事としては、システム開発者・整備士、車内販売員、駅員、窓口係、清掃係があります。
5人はそれぞれどの仕事に向いているのか、そして、そのお仕事をしていく上で、今から頑張った方がよいことも教えてもらいます。
発達障害の診断がある中で、その業界で働く先輩達の声や、業界関係者の方からのアドバイスも載っています。

飯島さんが解説の中でおっしゃっていたことが、とても心に残りました。

現実問題、強みだけを活かして生きていかれる場所なんてなく、苦手なこと・できないことをどう対処していくかというのは大切な能力ですその子の将来を真剣に考えるならば、弱みの部分は認めつつ、強みを活かす方法を教えることが重要なのです。

そのため、この本の中では、それぞれのキャラクターの強みを踏まえて職業の紹介をしていますが、併せて懸念点や努力が必要なことも書いています。それは工夫によって解決できることかもしれませんし、特性上難しいことかもしれません。ただ、それを隠すのではなく、本当の意味で子どもたちが自分自身と向き合えるようにできるだけフェアに伝えるように心がけています。

オオノマサフミさんのイラストがユニークで親しみやすい。
漫画や写真もおりまぜられているし、漢字には全てふりがながふってあるので、お子さんでも読みやすいと思います。(8〜20歳くらいの方に楽しんでもらえるとあります)

ちょっとページ数が多くて分厚く、一気に読もうとすると疲れてしまいます。
なので、ちょっとずつ読んだり、興味を持った職業から見てみるのもいいかもしれません。
値段が高めなので、購入するのはちょっと勇気がいりますが、ボリュームのある内容で、それだけの価値はあると思いました。
へえ〜!こんな仕事もあるんだ!と、なじみのなかった仕事もたくさんありました。
普通、子どもに人気があるのは、「サッカー選手」や「パティシエ」などの華やかな職業が多いけれど、現実的で、一見地味だな…と感じる仕事も、ひとつひとつがみんな大切なんですよね。
子どもと一緒に読みながら、「こんな仕事もあるよ!これは向いているかもしれないね」と、あれこれ話をしてみました。

第2章 kaien 鈴木先生が教えるキャリア教育のお話
第3章 発達障害のためのハローワークQ&A

2章と3章で、保護者向けに、発達障害児のキャリア教育をどう考えていくべきかということや、障害者雇用の事情などが詳しく紹介されています。

監修者の鈴木慶太さんと飯島さなえさんが取締役を努めている株式会社kaienは、発達障害の方に特化した人材サービス事業や就労支援事業、教育事業、相談支援事業などを展開しているということなので、理想的なことだけではなく、現実的な厳しいことも述べられています。
将来のことをただ漠然と不安に思っていても仕方がないので、現実をきちんと知ることができたのはよかったと思います。

鈴木先生のお話の中から、心に留めておこうと思ったこと

子どもたちが純粋に将来について希望を抱けるよう、周囲の大人は地に足をつけて現実を見据えながら、子どもの力を信じていく必要があります。
夢を一緒に見つつも、子どもにとって現実的な進路を選択肢として見せていくことや、夢に必要なスキルを日々の生活の中で伝えていくことは、親、先生が果たすべき役割の一つといえるでしょう。